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お題小説

30分切れ負け

お題

『ギザ10(ギザギザの10円玉)』

『スプートニク』

『アサガオ』

どうぞ。

----------------------------------------------


 アサガオの下には死体が埋まっている。

 そんな言葉を口にした君は、確か小学生の君だった。

 幼心ながら、僕はその言葉にどこかしら真実みたいなものが含まれている気がした。

 成人した今となっては、そんな言葉にはなんの信憑性もないことが分かる。

 というか、死体があるのはアサガオの下ではなく桜の木の下なのではないか。

 なぜ、アサガオの下には死体があるなんて君が言ったのか、それは永遠の謎になってしまった。

 とにかく、小学生だった君と僕はアサガオの下には死体があると、そう疑いもなく信じていたのだ。

 好奇心の塊だった君は、当然こう言うのだった。


「ねえ、一緒に探しにいこうよ」


 可愛らしい声で、君はそういうのだ。

 僕には、君の誘いを断るなんてことができるはずがなかった。

 僕らはアサガオを探しに歩き出した。

 君が言うには、そのアサガオはただのアサガオではないそうなのだ。

 そのアサガオは、真っ赤な色をしているのだそうだ。


「純粋な真っ赤なんだよ」


 と、君は言った。

 そんなアサガオ見たことがなかったけれど、君がいうのだから間違いはないだろう。

 僕たちは真っ赤なアサガオを探しに社宅の敷地内を見て回った。

 その当時、それはとてつもない大冒険だった。

 僕と君は三号館の社宅に住んでいたのだけれど、その時の冒険は1号館から5号館まで、すべての社宅の敷地内を探索したのだ。

 それはやっぱり、僕たちにとって大冒険だった。

 その社宅は緑がいっぱいあって、子供だけがぬけられる秘密の抜け穴みたいなのがいくつかあった。

 秘密の抜け穴とはいっても、そんな大層なものではない。

 何かのひょうしに木々に隙間ができて、そこが丁度、子供しか気付かないような小さなものだったのだ。

 僕と君は、その抜け道をいくつも通って冒険を続けた。

 いつもは行かないような場所が目の前に広がるたび、僕はワクワクするような、怖いような、お腹の底がフカフカする気持ちにさせられた。

 僕は自然に君の手を握っていた。

 手から伝わってくる君の体温はとても心地のいいものだった。

 そして、僕らはついにそれを見つけた。

 真っ赤なアサガオだった。

 それはおかしなアサガオだった。

 花弁が真っ赤なのも居ようだったけれど、それは茎までが真っ赤だった。

 花弁の中心部分さえ赤色だった。

 なんだか人間みたいなアサガオだな……僕はよく分からないままに、そんな感想を思っていた。


「掘ってみましょう」


 君はそういって、アサガオの下を掘り始めた。

 僕はとてもいやな予感がした。

 おそらく臆病風にふかれていたのだろう。

 周りを見渡してみても、そこがどこだか分からなかった。

 おそらくは社宅の敷地内だ。

 しかし、本当にそうなのだろうか。

 そこは植物たちがいっぱいの見知らぬ場所だった。

 僕は怯えた。

 そのとき、君が息をのむのが分かった。


「ほら、見て」


 君に促されるままにアサガオの下を見た。

 そこには、一人の少女が埋められていた。

 とても綺麗な少女だった。

 死んでいるようにはまったく見えなくて、今にもひょっこり起きだしてきそうな死体だった。


「ね、ほんとうだったでしょ?」


 君はそういった。

 僕は大人の人に知らせたほうがいいと君に言った。

 君はキョトンと首をかしげるだけだった。

 僕は電話を探しに走り出した。

 僕は名札のワッペンを胸からはずした。

 その中には、10円玉が入っているのだ。

 親が緊急連絡手段として僕に渡していたものだった。

 僕は公衆電話を探して、その10円玉をいれた。

 その10円玉はギザ10だった。

 周りがギザギザした10円玉だ。

 だからなのだろうか?

 電話は、ぷーぷー、という音をたてるだけで繋がらなかった。

 ギザ10はそのまま帰ってこなかった。

 まるで宇宙に飲み込まれるみたいに、ガチャンと公衆電話が10円玉を飲み込んでしまった。

 僕は駆け出した。

 君のもとへと走った。

 元の場所に戻ったとき、君はすでにいなかった。

 あの真っ赤なアサガオもなかった。

 そのアサガオの下に埋められていた少女の死体も見当たらなかった。

 代わりに、その真っ赤なアサガオがあった隣に、真っ青なアサガオがあった。

 茎まで真っ青なアサガオだった。

 さっきまではなかったものだ。

 それが君の代わりとでもいうように、そこに咲き誇っていた。

 僕は、そのアサガオの下を掘ろうとした。

 何かが埋まってるのではないかと確信していたからだ。

 そのアサガオに触れたとき、僕には全部わかってしまった。

 君はスプートニクになったのだ。

 なぜだかそう思った。

 君はスプートニクになったのだ。

 だからもう会えない。

 幼心に、なぜかそう確信した。

 僕は哀しい気分になりながら一人で歩き出した。

 涙がおちないように空を見あげた。

 そこには真っ青な空が浮かんでいた。

 この空の向こうに、スプートニクはいるのだろうか。

 分からなかった。

 僕と君は、もう二度と会えないのだ。


(おしまい)

---------------------------------
(総評)
文学は無理だ。
でも、やりたいことの一端はできた。
とりあえず、風景描写がうまくない純文学は屁のツッパリにもならないことを再確認した。
やっぱり、先人たちはすごいのだなあと思いました。
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