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野村美月先生の文学少女シリーズの中で主人公がお題小説を書いているのです。

で、私も書こうと思います。

ヒマなんで。

30分間で構成と執筆を終えます。

完成しなくてもぶった切ります。

では、てきとうにお題。

お題は3つです。

それではどうぞ。

-------------------------------------------

『消火器』

『便器ブラシ』

『マラリア海峡』



 彼女の得意技は便器ブラシでかまいたちをおこすことだった。

 漆をぬったような黒髪をたゆませながら、彼女はいつも便器ブラシを振り回していた。

 柄は竹で、ブラシ部分は緑色のプラスチックという、ありきたりな便器ブラシである。

 彼女はそれを肌身離さずもっていた。


「わたし、便器ブラシって、とっても大好きなのよっ!」


 そういって嬉しそうに笑う彼女はとても魅力的だった。

 便器ブラシに頬ずりをしながら、僕にむかって彼女はいつも自慢げに便器ブラシを見せ付けるのだ。

 彼女とは小学校からの付き合いで、その奇行には慣れっこだったのだが、そのときばかりは嫉妬した。

 もちろん、便器ブラシにだ。

 僕は、便器ブラシに嫉妬したのだ。

 僕は、彼女のことが好きだった。

 便器ブラシを振り回しながら、他校の連中にケンカをうり続ける彼女のことが、たまならなく好きだった。

 だから、こうなるのはとても自然なことだったのだ。

 必然だった。

 僕は、彼女の便器ブラシを隠すことにした。

 彼女の寵愛をうける便器ブラシを、僕は盗み出すことにしたのだ。


「……お前さ、あいつからどうやって便器ブラシ盗むつもりなんだ?」


 その計画を聞いた友人が、哀れなものを見つめる視線とともに言った。


「お前、あいつの幼馴染なんだろ? だったら、あいつの武勇伝くらい知ってるんだろな?」

「もちろんだよ。彼女が便器ブラシ一本で、全国大会で優勝した剣道部部長に勝ってしまったり、ヤクザの抗争を便器ブラシ一本で解決してしまったり、エトセトラエトセトラ……」

「じゃあさ、無理なんじゃないの?」

「いや、そうでもないんだ」


 僕は、彼に計画の詳細を教えた。

 彼は、とても驚いたような表情を浮かべた。


「お前さ、それ本気でやるつもりか?」

「もちろんだよ。僕の愛の前では不可能なんて有り得ないんだよ」

「愛ね」

「そう、愛さ! 真実の愛だ! トゥルーラブだぞ!」

「…………」


 形容し難いものを見つめる視線でこちらを向いてくる友人には気付かず、僕は計画を実行にうつすことにした。

 夜だ。

 千載一遇のチャンスは夜にある。

 僕は、学校中の消火器をかき集めて、家に運んだ。

 消火器は10本手に入った。

 窃盗罪で刑法235条な愉快な展開にはなるはずがなかった。

 だって、これはトゥルーラブ物語なのだから!

 愛の前にはなにもかも無価値なのだから!

 消火器だって僕のものなのだ!


●●●


 夜になって、僕は自宅の二階の部屋―――自室の窓を開けて隣の家を見ていた。

 隣の家は彼女の家だ。

 そして、便器ブラシのある家でもあった。


「やるしかないな」


 僕は覚悟をきめる。

 そして、最大の難関を見据えた。

 彼女の家の彼女の部屋―――そこまで、僕の部屋からは5mほどの距離があった。

 大きな隔たりだ。

 暗闇に染まった中にあっては、暗黒の奈落といってもいいほどの迫力がある。

 高い。

 風がピューピュー吹いている。

 マラリア海峡だった。

 それはマラリア海峡なのだ。

 僕と彼女の愛を邪魔するマラリア海峡なのだった。


「おのれマラリア海峡め! ぜったいにお前を乗り越えてみせるぞ!」


 マラリア海峡を見据え、覚悟をきめた。

 僕は消火器をつかみ、狙いを定め、彼女の部屋にむかってぶん投げた。

 バリンとガラスが割れる音が響いた。

 住宅街の中にあって、それはとても大きな音だった。

 時間はない。

 僕は次々に消火器を投げ入れていった。

 そして、僕自身もとんだ。


「アイイイイイキャンンンン フラアアアアイイイイイ!!」


 宙を飛んだ。

 窓ガラスを突き破り、僕はマラリア海峡を飛んだ。

 僕の体は彼女の部屋にあった。


「なに! なんなの!?」


 混乱した彼女の声がする。

 明かりはつけられていない。

 当然だ。彼女はすでに寝ているのだから。

 そして僕は、暗視ゴーグルをもって便器ブラシの姿を視界におさめていた。


(このクサレ便器ブラシが!!)


 僕は消火器をつかむと安全ピンを抜いた。

 そして、勢いよく粉塵を撒き散らした。


「きゃあああああ!!」


 彼女の悲鳴が聞こえる。

 便器ブラシを握って、てきとうに振り回してかまいたちをおこしている。

 ふふふ、甘いぞ。

 君の考えることなど最初からお見通しだ!


「あははは!! 真っ白になっちゃええええ!!」


 消火器10本分の粉塵を撒き散らした。

 部屋は真っ白になった。

 目の前の手の平さえ見えなくなったホワイトアウト。

 僕は計画どおり、ライターを取り出して火をつけ、それと同時に窓から飛び出た。


「っとう!!」


 二階からのダイブ。

 背後から爆発音が響いた。

 粉塵爆発だった。

 ゴオゴオと燃え盛る炎が見える。

 彼女の家の二階部分は吹き飛び、家は崩壊寸前だった。


「ふははは! どうだ便ブラシめ! 粉々だろう!!」


 勝ち誇る。

 そのときだった。

 燃え盛る家の中から彼女が現れた。

 その手には、便器ブラシが握られていた。


「ひどい、なんでこんなことするの?」


 彼女は哀しそうに微笑みながら、便器ブラシを振り上げた。

 そして、



(時間ぎれ)
(終わり)

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