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日記
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お題小説

30分切れ負け。

どうぞ。


『富士山』

『じゃがりこ』

『金髪』



 名探偵、花大路勝利は、富士の雪の山荘にいた。

 何を思ったのか冬の富士山に挑んだ彼は、半そで半ズボンという軽装ゆえに凍死寸前であった。

 もうすぐあの世からお迎えがくる―――そんな彼を救ったのは山のコテージだった。

 北大路勝利はそこで一命をとりとめるも、なんとそこで殺人事件が勃発してしまった!

 さすがは北大路勝利!

 いつもどおり見事な死神っぷりを炸裂させている彼は、その後連続殺人事件にクラスチェンジした事件を解決するために暗躍をかさねた。

 そして、今、北大路勝利は犯人に行き着いたのだった!

 彼は容疑者4名、すなわち馬鹿田大樹、馬鹿田芳樹、馬鹿田沙世、そして河馬田美香をラウンジへと集めた。

 今宵も、北大路勝利のIQ200が冴え渡る!!


●●●


「やはり、事件をとく鍵は浴槽におちたこの毛髪にあったわけです」


 北大路勝利は一本の毛を手に持ちながら言った。

 しかし、その毛髪は、日本人のものではなくて……


「見てのとおり、金髪の毛髪です。これを浴槽で発見したとき、私は妙な気分にさせられましたあ。黒の中に金色があると妙な気分になる。ええ、それは間違いなく性欲のかかわる何かでしたが、今はそんなことはどうでもいいです。問題は、なぜ馬鹿田家御用達のコテージに、金髪の毛髪が落ちているのかと、そういうことなんですよ」


 北大路勝利は、一昔前の探偵小説にでてきそうな帽子を人差し指であげてから、


「貴方がたのは皆日本人だあ。ハーフですらない。言わずもがな、髪の色は黒です。では、なぜ浴槽に金髪の毛髪が落ちていたのかあ」

「そ、それは探偵さん、さっきも言ったではないですか。それはきっと、私達の息子の馬鹿田隆志の髪の毛だって。息子は金髪に染めていますから」

「それは違いますよ奥さん。ええ、的外れもいいところです。いいですか? 実はこの毛髪……髪の毛ではないんですよ」

「え? 髪の毛じゃない!?」


 驚きの声をあげる皆。

 北大路勝利は、不敵に言い放った。


「そう、これは髪の毛ではない―――陰毛だあ!!」


 ビカカーン、と彼の背後に稲妻がはしった。


「い、陰毛ですか?」

「そのとおりです。そして、これが事件をとく鍵でした。事件現場に残されていたこの髪の毛。第一被害者の馬鹿田刃迦さん殺害現場におちていたこの金髪の陰毛――これをひもとけばすぐに犯人は分かりましたあ」

「探偵さん、そんなにもったいぶらずに、はやく犯人を教えてください。バカ・・・いえ、馬鹿田さんたちを殺した犯人がいると思うと、私は夜も眠れないんです!」


 と、ゆういつ馬鹿田ではない河馬田美香が言った。

 北大路勝利は、鬼の首でもとったように言った。


「河馬田さん・・・・・犯人は貴方ですよ」

「え? わ、私が!?」

「そうです。貴方、第一被害者の隆志さんとは婚約者で、しかも第一発見者でしたねえ。お風呂に一緒にはいろうとしたとき彼の死体を発見したとか」

「そ、そうですが」

「河馬田さん、貴方、そのとき風呂に一緒にはいっていたんでしょう。だから金髪の陰毛が風呂場に残されることになったあぁ」

「ちょっとまってください」


 北大路勝利の言葉をとめたのは馬鹿田大樹だった。

 彼は続けた。


「金髪の陰毛って……美香さんはれっきとした日本人ですよ。髪の毛だって黒ですし、そんなありえません」

「旦那さん、あなたの気持ちはよおく分かる。しかし、事実はまげることはできませえんん。何を隠そう、彼女は外国人とのハーフ・・・・・・この黒の髪の毛だって、染めたものにすぎないんですよお!」


 ビカカーンと彼の背後で稲妻がはしった。


「な、それは本当かい美香さん」

「だ、だからなんだっていうの! それに、第二の殺人事件のとき私にはアリバイがあるわ! そのときも私が第一発見者だったけれど、そのとき私は凶器をもっていなかった! 被害者は頚動脈を切断されたというのに、そのときの凶器はまだ見つかっていないじゃない!」


 豹変したように河馬田は言った。

 北大路は、どこからだしたのかいつのまにかタバコを吸い、スウーと煙を吐き出しながら言った。


「じゃがりこですよ」

「じゃ、じゃがりこ?」

「ええ、そうです。河馬田さん、あなた、重度のじゃがりこ中毒だったあ。寝るとき以外、いつもじゃがりこを食べていましたね。最初、私も変わった人間がいるものだなあと思っていただけでした。しかし違ったんですね。貴方は犯行を隠すためだけに、毎日毎日じゃがりこを食べ続けていたんだあ」

「ちょっとまってください。じゃがりこなんかでどうやって人を殺すっていうんです?」

「ふっ、じゃがりこの先端をとがらせれば造作もないことです。あれはかなり固いですからねえ。先端を尖らせれば、人の柔らかい肉など一発ですよ。そしてそのあとは・・・・・


 北大路は河馬田美香を指差してから、


「犯行後はそのじゃがりこをムシャムシャと食べてしまえばいいんだ! それで凶器はなくなる! 完全犯罪でしたよ。ええ、なかなか思いつくことじゃあない。貴方のゆういつの失敗は、私がここにいたということだけです。この私、名探偵北大路勝利がね」


 その言葉を聞いたとたん、美香は泣き崩れた。

 そして、独り言をいうかのように口走った。


「許せなかったのよ! じゃがりこはポテトチップスにおとった下等なお菓子だという彼らの言葉が許せなかった。だからだから・・・・・」

「美香さん。あなたのじゃがりこへの熱意は認めます。しかし、そのじゃがりこで人を殺す・・・・これは商品価値を低めることになりませんかあ。貴方はじゃがりこのためといいながら、ますますポテチの不動の人気を高めただけなじゃないですか」

「そ、そんな・・・・私は、私は・・・・・・」


 河馬田は泣き崩れた。

 罪の意識に彼女は己の悪行を悔い改めたのだ。

 北大路は彼女の肩にそっと手をそえた。

 事件は無事解決されたのだった。



 迷探偵、北大路勝利の冒険ははじまったばかり。

 次はどんな迷事件が彼を待ち受けているのか。

 がんばれ北大路勝利!

 君の栄光はすぐそこだ!
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お題

『着物』

『掃除機』

『かぼちゃ』

---------------------------------------------------------------------------


「君の顔は、いつ見てもかぼちゃみたいだよなあ」


 なんて、これまたいつものように美香が言った。

 幼馴染の顔を見て、開口一番にそれはあんまりである。

 それに、断じて俺の顔はかぼちゃに似ているなんてことはない。

 毎日毎日、かぼちゃ扱いされるせいで、俺にとって「かぼちゃ」という単語はコンプレックスになりつつあった。

 この精神的トラウマをどうしてくれるのだろうか。


「いや、だって君の顔はかぼちゃじゃないか。どうみてもかぼちゃだよ。君の顔を見た人間10人中10人が君のことをかぼちゃだというだろう」


 そうかぼちゃかぼちゃ連呼されると、本当に自分がかぼちゃになったみたいで嫌だ。


「あれ? なんだっけ? かぼちゃの芽には毒があるんだっけ? ソラニンとかいったかな」


 それはじゃがいもだ! といつものように突っ込みをいれると、美香は「うわ、かぼちゃが喋ったああ」と驚いてみせた。

 殺してやりたい。


「そういえば、君の顔、どこかで見たことがあるな。あ、あれだ。私の家にある雛人形にそっくりなんだ。これが傑作でね。うちの雛人形の顔はぷくぷくにふくれて、これがなんとかぼちゃみたいなんだよ。ははは、君にお似合いだな!」


 高笑いをする幼馴染。

 笑うたびに彼女の大きな胸がプルンプルン揺れた。


「なかでも殿様? あの一番上に偉そうに座ってる男が君nそっくりでねえ。せっかくだからと、小学生の頃にかぼちゃ色に染めたことがあるんだその顔を。そしてらビックリ仰天で、君になったんだよ! あれはほんとかぼちゃでねえ。とてもおいしそうなくらいのかぼちゃだったなあ」


 かぼちゃかぼちゃと、こいつには語彙がないのだろうか。


「……まあ、君そっくりのその人形は、私にとってもやはり特別な存在になったわけだけれどね」


 ん? なんか言ったか?


「なんでもないよカボチャくん! しかし聞いてくれよ、そのかぼちゃ雛人形なんだが、ついこの間、君そっくりの人形の耳が落ちてしまってねえ。それに気付かないまま、うっかり掃除機で吸い込んでしまったんだよ!」


 掃除機?


「そうさ。いやあ、私としたことがとんだヘマだったな。しかもその掃除機は吸引力が落ちないでおなじみのすさまじい掃除機だったからね、ウインウインと回転しているうちに、耳が完全に破壊されてしまってねえ。復元不可能になってしまったんだよ!」


 悲嘆にくれる彼女。

 それは災難だったなと、俺は適当にあいずちをうった。


「お? 同情してくれるのかい」


 いや、同情ってほどでもないけれど。

 でも、大事にしていたものが壊れるっていうのは、とても嫌なことだと思うからさ。


「そうだねえ。そうだよねえ。そこでものは相談なんだけどさあ」


 美香は、ニヤリと唇を吊り上げると、


「君、私の雛人形になってくれないかな?」


 と、手にスタンガンを持ちながら言った。

 何を言っているんだこいつは。


「だって、君の体はもう、動かないだろ? さっきから一言も喋ってないの、気付いていないのかい」


 は?

 いやだって、俺はこうして……


「君は自分で喋っているつもりらしいけどね、君はさっきから一言もしゃべっていないんだよ。まあ、私ほどのかぼちゃマニアになると、それでも君の言いたいことくらい分かるけれどね」


 な、なんだと?


「体も動かない。当然だね。すでに君の体は蝋人形になっているのだから。ふふふ、ここは私の秘密の部屋で、暗闇に染まっているのだよ? 君には何も見えないだろう。見えているのは私だけなんじゃないかな? 当然だよね。だって君は私の雛人形になるんだから」


 俺の目……

 確かに、なぜだろう。

 俺は俺のいる場所を認識できないでいる。

 そんな描写は一つもしていないし、俺が見えているのは彼女だけ……

 体も、動かない?

 え?

 なんで……


「ふふふ、今からちゃんと着物をきせて、お化粧もして、立派な雛人形にしてあげるからね」


 彼女だけが見える。

 彼女は、嗜虐的な笑みを浮かべながら……


「これからもよろしく頼むよ。私だけのかぼちゃくん」


(おしまい)


お題小説のPART2です。

30分切れ負け。

お題は3題です。

どうぞ。



『TSUTAYA』

『アダムスファミリー』

『傘』


-------------------------------------------------------------------------

 

 その日は、記録的な豪雨だったと思う。

 勤め先から帰ってきた私は、全身をずぶぬれにして寒さに震えていた。

 傘をさしていながらコレなのだった。

 100円ショップで買ったビニール傘ではあったが、さすがにもう少し傘としての役割を全うしてくれないものかと、私は顔をしかめながら傘をたてかけた。

 そのとき電話がなった。

 自宅備え付けたの固定電話だ。

 私は受話器を取り上げ、耳にもってきた。

 聞こえてきたのは男の声だった。


「もしもし、笹原さんのお宅でしょうか?」

「そうですが?」

「あ、私足立区TSUTAYAのものなんですが」


 TSUTAYA?

 私は戸惑うようにして思った。

 確かに、私の住居は足立区にあり、そのTSUTAYAの店舗は知っていた。

 よくDVDを借りにいく店だ。

 しかし、最近は仕事が忙しくて、利用した記憶がなかった。

 だから延滞という可能性もないだろう。

 いったいなんの電話なのだろうか、困惑したように沈黙していると、店員の男は一度店にきてください、と言い残して電話をきった。

 ぷーぷー、という無機質な音が聞こえてきた。


「なんなんだいったい」


 不機嫌そうに言い、とりあえずは体を乾かしてからだとばかりに、バスタオルと着替えを取りに行った。

 そして、居間でテレビをみながら、体をかわかした。

 今だに液晶ではなくブラウン管の画面からは、殺人事件の報道がなされていた。

 新しい事件だ。

 どうやら、6時間前に、一人の老婆が殺されたらしい。

 しかも、その現場は自宅から近所だった。


「怖いなあ」


 もう少しその事件の情報を知りたかったのだが、すぐにニュースはかわった。

 私は体を乾かし終わると、近所のTHUTAYAへと向かった。


●●●


 そこはけっこう大きめのTSUTAYAだった。

 私自身もDVDの豊富さからここの会員になったようなものであるから、その豊富さは折り紙つきだった。

 私はいつものようにエスカレーターをつかって店の中へと入っていった。

 私を待ち受けていたのは、警察だった。


「ええと、あなたが笹原さん?」


 目つきの鋭い初老の警察が言った。

 彼のほかにも私の周りを囲むようにして、4人の警察員がいた。

 その全員が大柄で、私は圧倒されてしまった。


「はい、そうですが」


 私は戸惑いながら答えた。


「そうですか、で、笹原さん。あなた、この店ではよくビデオを借りているようですね」


 ビデオではなくDVDだと訂正したかったが、この年代の男にとってはどちらも同じようなものなのだろう。

 私は端的に「そうです」と答えた。


「この前借りたビデオを覚えていますか?」

「たしか、アダムスファミリーの一作目だったと思いますが」

「そうですね。確かにそうだ。そして、あなたは同じようなビデオを何本も借りている」

「同じようなビデオ?」


 警察は、鋭い視線で私をとらえると「そうです」という前置きのあとで、


「残虐な内容のビデオですよ。あなたが借りるのはきまって、人が残虐な方法で殺されるものばかりだ。コメディ調のも含まれているようですが、どこかしらに人が死ぬ描写がある。そうですね?」

「いや、ちょっと待ってくださいよ。別にアダムスファミリーは・・・・・」

「死ぬでしょ? 人が」

「た、確かにそうですが」


 なおも抗議の声をあげようとしたとき、警察は本題にはいるようにして言った。


「笹原さん、この近所で殺人事件がおこったのを知っていますか?」


 それは疑問ではなく、断定的な声色の言葉だった。

 私が肯定の言葉を口にすると、警察は鬼の首でもとったように、


「あなたがやったんでしょ?」

「は、はい?」

「あなたが殺したんでしょ」


 警察はやはり断定的に言った。


「今回の殺人は非常に猟奇的でしてねえ。いや、こんなところではいえないくらいの惨殺っぷりでしたよ。それで、私たちは近所のビデオ屋で調べていたわけです」

「な、なにをですか?」

「決まっているでしょう。そういうものが好きな人間をですよお。猟奇的な内容のビデオを借りている人間がいないか、調べていたんです。そしてあなたにたどりついたあ」


 確信的な瞳で警察は私をにらんで、


「あなたが犯人なんでしょ?」

「ちょっと待ってください! なんでそんなことで犯人扱いされなくてはいけないんですか!?」

「だって、あなたは猟奇的な内容のビデオばかり借りてたじゃないですか。動かぬ証拠ってやつですよ」

「な、なにを言って・・・・・」

「ん? ひょっとしてその傘ですかな?」


 警察は私の持っているビニール傘を指さしながら言った。


「その傘が凶器なんですか?」

「きょ、凶器?」

「しらばっくれても無駄ですよ。その傘で被害者を刺したんでしょうが」

「そ、そんなこと・・・・・」


 こいつらはなにを言っているんだ?

 まったく意味がわからない。

 しかし、警察は待ってくれるつもりはないようで


「ビデオを借りていた以上、あなたが犯人なんですよ。ほら、このとおり令状もでています」

「そ、そんな・・・・だって・・・・」

「おい、連行しろ」


 言うと、周りの警察が私の腕をつかんで手錠をはめた。

 そのまま、引きずるようにしてパトカーに乗せられた。

 私は必死に身の潔白を主張した。

 しかし、結果は変わらなかった。

 私は二年後、最高裁判所から死刑判決を言い渡された。


(おしまい)

 

野村美月先生の文学少女シリーズの中で主人公がお題小説を書いているのです。

で、私も書こうと思います。

ヒマなんで。

30分間で構成と執筆を終えます。

完成しなくてもぶった切ります。

では、てきとうにお題。

お題は3つです。

それではどうぞ。

-------------------------------------------

『消火器』

『便器ブラシ』

『マラリア海峡』



 彼女の得意技は便器ブラシでかまいたちをおこすことだった。

 漆をぬったような黒髪をたゆませながら、彼女はいつも便器ブラシを振り回していた。

 柄は竹で、ブラシ部分は緑色のプラスチックという、ありきたりな便器ブラシである。

 彼女はそれを肌身離さずもっていた。


「わたし、便器ブラシって、とっても大好きなのよっ!」


 そういって嬉しそうに笑う彼女はとても魅力的だった。

 便器ブラシに頬ずりをしながら、僕にむかって彼女はいつも自慢げに便器ブラシを見せ付けるのだ。

 彼女とは小学校からの付き合いで、その奇行には慣れっこだったのだが、そのときばかりは嫉妬した。

 もちろん、便器ブラシにだ。

 僕は、便器ブラシに嫉妬したのだ。

 僕は、彼女のことが好きだった。

 便器ブラシを振り回しながら、他校の連中にケンカをうり続ける彼女のことが、たまならなく好きだった。

 だから、こうなるのはとても自然なことだったのだ。

 必然だった。

 僕は、彼女の便器ブラシを隠すことにした。

 彼女の寵愛をうける便器ブラシを、僕は盗み出すことにしたのだ。


「……お前さ、あいつからどうやって便器ブラシ盗むつもりなんだ?」


 その計画を聞いた友人が、哀れなものを見つめる視線とともに言った。


「お前、あいつの幼馴染なんだろ? だったら、あいつの武勇伝くらい知ってるんだろな?」

「もちろんだよ。彼女が便器ブラシ一本で、全国大会で優勝した剣道部部長に勝ってしまったり、ヤクザの抗争を便器ブラシ一本で解決してしまったり、エトセトラエトセトラ……」

「じゃあさ、無理なんじゃないの?」

「いや、そうでもないんだ」


 僕は、彼に計画の詳細を教えた。

 彼は、とても驚いたような表情を浮かべた。


「お前さ、それ本気でやるつもりか?」

「もちろんだよ。僕の愛の前では不可能なんて有り得ないんだよ」

「愛ね」

「そう、愛さ! 真実の愛だ! トゥルーラブだぞ!」

「…………」


 形容し難いものを見つめる視線でこちらを向いてくる友人には気付かず、僕は計画を実行にうつすことにした。

 夜だ。

 千載一遇のチャンスは夜にある。

 僕は、学校中の消火器をかき集めて、家に運んだ。

 消火器は10本手に入った。

 窃盗罪で刑法235条な愉快な展開にはなるはずがなかった。

 だって、これはトゥルーラブ物語なのだから!

 愛の前にはなにもかも無価値なのだから!

 消火器だって僕のものなのだ!


●●●


 夜になって、僕は自宅の二階の部屋―――自室の窓を開けて隣の家を見ていた。

 隣の家は彼女の家だ。

 そして、便器ブラシのある家でもあった。


「やるしかないな」


 僕は覚悟をきめる。

 そして、最大の難関を見据えた。

 彼女の家の彼女の部屋―――そこまで、僕の部屋からは5mほどの距離があった。

 大きな隔たりだ。

 暗闇に染まった中にあっては、暗黒の奈落といってもいいほどの迫力がある。

 高い。

 風がピューピュー吹いている。

 マラリア海峡だった。

 それはマラリア海峡なのだ。

 僕と彼女の愛を邪魔するマラリア海峡なのだった。


「おのれマラリア海峡め! ぜったいにお前を乗り越えてみせるぞ!」


 マラリア海峡を見据え、覚悟をきめた。

 僕は消火器をつかみ、狙いを定め、彼女の部屋にむかってぶん投げた。

 バリンとガラスが割れる音が響いた。

 住宅街の中にあって、それはとても大きな音だった。

 時間はない。

 僕は次々に消火器を投げ入れていった。

 そして、僕自身もとんだ。


「アイイイイイキャンンンン フラアアアアイイイイイ!!」


 宙を飛んだ。

 窓ガラスを突き破り、僕はマラリア海峡を飛んだ。

 僕の体は彼女の部屋にあった。


「なに! なんなの!?」


 混乱した彼女の声がする。

 明かりはつけられていない。

 当然だ。彼女はすでに寝ているのだから。

 そして僕は、暗視ゴーグルをもって便器ブラシの姿を視界におさめていた。


(このクサレ便器ブラシが!!)


 僕は消火器をつかむと安全ピンを抜いた。

 そして、勢いよく粉塵を撒き散らした。


「きゃあああああ!!」


 彼女の悲鳴が聞こえる。

 便器ブラシを握って、てきとうに振り回してかまいたちをおこしている。

 ふふふ、甘いぞ。

 君の考えることなど最初からお見通しだ!


「あははは!! 真っ白になっちゃええええ!!」


 消火器10本分の粉塵を撒き散らした。

 部屋は真っ白になった。

 目の前の手の平さえ見えなくなったホワイトアウト。

 僕は計画どおり、ライターを取り出して火をつけ、それと同時に窓から飛び出た。


「っとう!!」


 二階からのダイブ。

 背後から爆発音が響いた。

 粉塵爆発だった。

 ゴオゴオと燃え盛る炎が見える。

 彼女の家の二階部分は吹き飛び、家は崩壊寸前だった。


「ふははは! どうだ便ブラシめ! 粉々だろう!!」


 勝ち誇る。

 そのときだった。

 燃え盛る家の中から彼女が現れた。

 その手には、便器ブラシが握られていた。


「ひどい、なんでこんなことするの?」


 彼女は哀しそうに微笑みながら、便器ブラシを振り上げた。

 そして、



(時間ぎれ)
(終わり)


最近、ブログも何も更新してこなかったわけですが、どうやらその波も去ったようです。

これは言い訳ですが、私はどうしても、web上のブログという存在に違和感をもっているわけです。

なんだか馬鹿馬鹿しいというかなんのために文字を書いているのか分からなくなるというか……

もっとせきららに言ってしまえば、主張することの傲慢さに耐え切れなくなってしまうのです。

まあ別に珍しいものでもありません。

おおかれ少なかれ、誰にもこういうものはあるでしょう。

私の場合も時間さえたてば、はいこのとおりです。

ちゃんとブログを更新することができます。

よかったです。うん、よかった。

言い訳は終わりということで、

わたくしごとではありますが、

わたくしごとではないブログなんて存在するわけないのではありますが、

とにかく、長い時間かいてきた小説がやっと完成したと。

それを報告したくこのような文章を書いていると。

それだけが言いたかったのです。

なんだかいつものの調子がでません。

なんなんだこの堅い文章は。

地の文か? 地の文なのか?

ここはブログと見せかけたフィクションの世界なのか?

なんて、中二病を炸裂させたところで続きです。

小説が完成しました。

よかったです。

けっきょくまたしても一年作業でした。

遅漏すぎです。

まあ別にいいんですけど。

面白かったですし。

で、これはとっとと新人賞に送りたいと思います。

爽やかな青春小説にしようと思っていたら人が8人も死ぬは猟奇殺人だはでとても愉快な展開になりましたが、とにかく完成してよかったです。

とっとと次を書こうと思います。

終わりです。

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